ところで皆さんは、薬がどのようにしてできるのかご存知でしょうか?
前回紹介した通り、薬には一般的に「主作用」と「副作用」があります。それは、風邪などの軽い症状に対する薬も、がんに対する抗がん剤など、重い病に対する薬でも、みな同じです。皆さんが薬に頼るのは、「主作用」の効果を期待しているからでしょう。それによって、今患っている病を治すためですよね。
しかしその一方、薬を飲めば、個人差はありますが、どうしても「副作用」の影響を受けてしまうのです。この副作用によって、苦しめられた経験を持つ方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
どんな種類であれ、新たに薬を開発する場合、主作用だけでなく副作用についても調べます。例えば、高血圧に効果のある薬を開発する場合、まず「治験」といってある一定数の患者に協力してもらうことで、「主作用(血圧が下がる効果)」について調べます。その時に、合わせて“予想される副作用”についても調べるわけです。
その後、効果が認められれば(例えば1,000人中990人に効果があった)、「降圧剤」として認可が下り、正式な薬として販売されていくわけです。
しかし、ここでひとつ、見落としがちな重大な事実があります。
それは、特に副作用の効果を調べる場合、あくまであらかじめ「おそらくこうした副作用が起こるであろう」という効果についてのみ、調べるということです。それ以外の副作用の効果に関しては、すべてを調べられないことをご存知でしたか?
多くの場合、実際に市販される段階では「もしかしたらまだわかっていない、まったく違う副作用が生じるかも?」という認識レベルでしか、わからないのが現状です。
このように、医者が処方する薬のすべてが、必ずしもその効果を完璧に把握しきれているわけではありません。薬のことが、よくわからないまま出されているのです。
これは見方を変えれば、とても危ない状況であるといえます。
私のクリニックには、毎日多くの方がみえますが、初診の患者さんとの間では、よくこんな会話をすることがあります。
「今、Aさんはどんな薬飲んでます?」
「ええっと、高血圧のための降圧剤を毎日、欠かさず飲んでますわ。」
「それで体調はどうですか?」
「おかげさんで血圧が正常値に下がってるんで、調子いいですわ。いたって健康、とちゃいますかな」
そこでまた、皆さんに質問です。
毎日薬を飲んでいるAさんは、はたして健康といえるでしょうか?
もしかしたら多くの方が、「調子いいんだから、健康なんじゃないの」と思われているかもしれませんね。
でも、それは大きな間違いです。
本当の健康とは、「薬に頼らなくても正常な状態で生活を送れる」ことなんです。
過去の記事で、救急部に同程度のけがで運ばれてきた、同年齢の方が2人いるとしたら、健康な人とわんさか薬を飲んで正常値を保っている人、どちらが早く治るかという質問をしましたよね。
いかがですか?
誰だって、健康になること、そして健康を少しでも長く維持し続けたいと思いますよね。その結果、私たちの生活の中には、健康に関する情報があふれています。
「毎日、○○を取り入れた食事を摂取すれば、高血圧に効果的!」
「アメリカでベストセラー! 1ヶ月間○○を一日5粒摂取するだけで5kgも痩せられる!!」
こんなキャッチコピー、よく目にしませんか? テレビや雑誌など、健康関連の広告を目にしない日はないほどですよね。しかし、これらの情報は果たして真実なのでしょうか?
広告等で紹介された健康法は、すべての人に対して効果があるとは限りません。また、その健康法を試す人の体調や、生活習慣、年齢や性別、病気の有無などの個人個人の違い、さらには、日常的に服用している薬との相性などによっては、かえって健康を害する可能性も大きいのです。
しかし、このような事実を宣伝する側が、これを大きく取り上げることは少ないでしょう。利用者側も、魅惑的なキャッチコピーや効能にばかり目を奪われてしまいがちです。
そこで、世間に知られている健康法や健康食品を例に、実践してみたけれど効果がない、逆に健康を悪化させてしまったケースを、次回の記事で、3つほど紹介していきたいと思います。
次回は来週更新予定です。お楽しみに!