病気になってから、どのように治療していくか?
これまでにご紹介してきたとおり、日本の医療はこのことのみに力を入れてきました。しかし、それによる不都合も、ここ数年で問題になりつつあります。
それは、「病気を予防する」という意識の弱まりです。
「病気になったら病院に行けばいい。保険がきくから治療費も安いし……」
普段の食事や運動など、誰もが簡単にできる病気の予防や健康増進を怠り、こういった意識が広がっています。その結果、日本の医療費は、年々増大化の一途をたどっているのです。
医療費の自己負担割合が3割に引き上げられたり、健保組合が破産に追い込まれるなど、国が日本の医療や健康を守ってくれる時代は、終わりを告げようとしています。
「じゃあ、私たちはこれからどうすればいいの?」
当然、皆さんはこのように思われるはず。
そこで、皆さんにご紹介したいのは、「統合医療」という考え方です。今後、日本にとってとても重要なキーワードであり、薬をやめるために必要な手段でもあります。
統合医療とは、2007年、JACT(日本代替・相補・伝統医療連合会議)とJIM(日本統合医療学会)の連合学術大会にて両学会が統合されて、新たに有限責任中間法人としての「日本統合医療学会(IMJ Integrative Medicine Japan)」が発足したことで、日本にも本格的に統合医療に対する取り組みが始まりました。
1. 患者さん中心の医療
2. 身体、精神のみならず、人間を包括的に診る(病気ではなく病人を診る)全人的な医療
3. 治療だけでなく、疾病の予防や健康増進に寄与する医学
4. 生れて死ぬまでの一生をケアする包括的な医療
また、私が考える統合医療とは、次の3つの考え方や治療行為を含めたものです。これらの要素について、ご説明しましょう。
1.対症療法+体質改善
2.西洋医学+伝統医学
3.医学的根拠+自然治癒力
病気にならない体をつくるために
1.対症療法+体質改善
対症療法とは、今まで紹介してきたとおり、病気に伴う痛みや進行を緩和するための治療です。しかし、これだけでは、病気そのものを完全になくすことはできません。
そこで、体質改善、つまり病気にならないための健康づくりが重要になってきます。
原因療法によって、体質そのものをゆっくりと変えていくこと。そして、栄養療法や適切なサプリメントを摂取することで、不足している栄養を補っていくこと。さらに、単に「病気にかかっていない状態」からもう一段階進んで、「毎日を生き生き生活できるからだ」を手に入れるための体質改善をしていくこと。
このようにすることが、予防医学につながるのです。
この「体質改善」という医療は、今後、ますます注目されていくでしょう。
「伝統医療」を活用すれば、病院に頼らなくてOK
2.西洋医学+伝統医学
今日の日本における医療は、西洋医学を中心に動いています。確かに、西洋医学による医療技術の進歩によって、「不治の病」とされてきた多くの疾病が、治療可能になったことも事実です。
しかしその一方、例えば、がん治療の抗がん剤投与による副作用の影響など、時として治療行為そのものが人体に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。西洋医学で使われる薬は、人工的に作られたものが多いため、という側面も考えられるでしょう。
そこで、メリットを生かした上で、他の医学を併用する考え方が重要になってきます。
それは、伝統医学、つまり中国医学(漢方など)・アーユルヴェーダ(伝統インド医学)・ギリシャ医学といった、三大伝統医学をはじめとしたものです。
例えば、日本でもおなじみの漢方は、生薬を処方したり、灸や按摩などによって体から毒素を排出させ、体の自然治癒力を高めることで治癒に導く療法です。西洋医学に比べると、客観的な効果をデータ等で説明できない部分もあります。科学的根拠が乏しいため、日本の医療において、今までは陰に隠れた存在でした。
しかし、体質改善という観点からみれば、漢方による療法はとても有効的な手段なのです。
1でふれた「対症療法+体質改善」と同じように、従来の西洋医学に加え、伝統療法ならではのメリットを加えることで、より健康な体作りを目指せるようになります。
3.医学的根拠+自然治癒力
この2つも、1,2で紹介してきたことと同様です。
対症療法や西洋医学による治療法には、医学的な根拠がはっきりしています。治験データや様々な科学的検証の結果、人体に効果が認められる成分を凝縮させた薬などを作ることで治療します。
しかし、この手段は半ば「半強制的」に体を治療するわけで、副作用による体への負担も大きいのが問題です。
そこで、体質改善や伝統医学による治療手段を新たに用いることで、人間が本来持っている自然治癒力を高めることも、重要になってきます。
例えば、風邪をひいた場合、病院に行けば抗生物質を処方されるでしょう。しかし、風邪の原因はウィルスです。そのため、細菌をターゲットにする抗生物質は、あまり効果がないという説もあります。
一方、人体の中では様々な物質を分泌しています。それらが、結果的にウィルスを攻撃して治癒していくのです。これこそが自己治癒力であり、自己治癒力を高める療法として、原因療法や伝統医学が存在するわけです。
誰しも、できれば人工的に作られた薬などに頼りたくはないでしょう。自分の力で病気を治したり、予防したりできるのがベストであるはずです。そのために、自然治癒力を高めていくことが、今後、日本人一人一人に課せられた目標ではないでしょうか。
以上、3つの観点が、統合医療の原点となっています。この統合医療を実現させていくために、今、最も必要なのは、日本人の「予防意識」を高めることです。
次回の更新もお楽しみに!