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予防に対する意識・医療環境 日本の今

医療費

 

前回、予防意識を高めることの大切さをお伝えしましたが、そもそも、「予防」の定義とはどのようなことでしょうか?

点滴など、具体的な医療行為でなくとも、今まで紹介してきたサプリメントや健康食品の摂取、また、フィットネスジムに通ったり、スポーツを楽しむ行為も、健康を増進させて病気を未然に防ぐ行為であるといえます。

現在の日本の医療費は、年間約40兆円以上といわれています。その一方、サプリメントなどを含めた健康産業分野の売上高は、年間約100兆円ともいわれているのです。これは、医療費の約3倍の規模にもなります。

この数字だけをみると、日本は健康増進や病気の予防に対して、積極的な環境であるかのように思えるかもしれません。

しかし、この数字の裏には、いくつかの問題が潜んでいます。

ひとつは、予防に対する治療や製品に対して「保険が利かない」ということです。対症療法であれば、3割の金額負担で済みますが、病気を予防するために病院で医療行為を受けたときには、10割(全額)を負担しなければなりません。

この「7割の差」は、患者にとって非常に大きいものです。例えば、1回1万円の場合、保険が利けば3千円の負担で済みます。これが1度だけなら7千円の差ですが、毎週1回、1ヶ月間通った場合はどうでしょうか。約3万円もの差が生じますよね。これを1年間続ければ、なんと、約40万円もの差が生じてしまうのです。

この差は、予防に対する意識が一向に高くならない、一つの大きな要因と言えるでしょう。

予防に対する意識が高まらない中で、医者側もまた、予防医学に対する認識が不足している事実があります。それは、日本には「対症療法」という治療手段に慣れてしまっている医者が多いからです。

日本の多くの医者は、治療後も、「二度とこの病気にならないようにするためにどうするか?」という積極的な予防、つまりケアの姿勢ではなく、「今、病気が再発していないかどうか?」という視点、確認作業の視点で診察します。検査や経過観察などで見るのは、主に後者です。これでは、医療の現場でも、予防に対する取り組みがなかなか進まないのもうなずけます。

また、法整備が進んでいないために、サプリメントや健康器具を「人の弱みに付け込んで売り込む」業者が多いのも事実です。

消費者も、予防に対する正しい知識がないので、健康産業の中における被害が増えています。これは、業者と消費者、双方に問題があるといえるでしょう。

このように、日本における予防医学や意識は、まだまだ発展途上であり、多くの問題を抱えているのです。

 

予防意識を高めて、もっと健康になりませんか?

日本人も含めて、人間は「自分が痛い目に合わないと、物事の重要性や大切さがわからない」という傾向があります。

例えば、心筋梗塞やがんにかかり、苦しい思いをして、なんとか治療することができたとしましょう。このとき、はじめて「二度と再発しないようにするためにはどうしたらいいか?」と真剣に予防することを考えるのではないでしょうか。このような事態になって初めて、“どうすれば積極的に再発を予防できるのか”考えはじめます。

そして、そこには人の弱みに付け込む、根拠に乏しい悪徳商法があり、わかっていながらまんまと引っかかり、病気の再発を恐れてよくわからないサプリを大量に摂取し、その結果、自身の身体を余計に悪化させてしまうのです。

まずは、このような再発予防意識の高い方たちに対して、予防医学や統合治療を含め、医学的な根拠を持った正しい知識を得てもらう。医療サイドもそれに応えるべく、しっかりした対応をしていくことが、日本人全体の予防意識を高める第一歩だと思います。

そのために、私を含めた医療側が必要なことは、正しい予防医学を認識したうえで患者に伝えていく、正しい予防、健康増進を啓蒙していくことです。

再発を恐れて予防意識が高まっている患者の方々も、再発予防のために具体的に何をすることがベストなのか、理解していない人が多いのです。そのため、いつまでも薬を飲み続けたり、過剰な宣伝に乗せられて、必要もないサプリメントを摂取している方も目立ちます。しかし、高いお金を払っても、あまり効果を実感できないでいるのが現状です。

そのような方たちに対して、例えば、以前紹介した「メディカルサプリ」の方法で、患者一人一人に適したサプリメントを処方する必要があるのです。

また、予防医学協会を中心に、全国に「予防専門医」を普及させる活動も、徐々にではありますが、取り組んでいます。これは、対症療法中心の医療界で、原因療法や健康増進・予防に対する専門知識を有した医者を育成していくことが目的です。医療業界の中で、予防医学を積極的に普及させていくことを目指しています。

しかし、こうした取り組みは、まだはじまったばかりです。今後、私自身も現場での日々の診察や、一般の方も参加できる学会や講演などで予防医学の必要性を積極的に提言していくなど、力を入れていきたいと思います。

 

 

おわりに

 

私が大阪にクリニックを開業して、本格的に原因療法や予防医学に取り組んでから、早24年近く経ちました。開業当時、予防医学に対する世間や医療業界に認識がなかったころに比べて、今は少しずつではありますが、着実に普及しつつあると感じています。

しかし、これまで触れて来たように、医療保険の問題やサプリメントなど健康食品に関する被害など、依然として多くの問題が山積しています。

1977年、アメリカで発表されたマクガバン・レポートで、初めて予防医学の必要性がクローズアップされてから30年。予防医学の先進国であるアメリカでは、すでに代替医療や予防に対する国民の高い意識、そして高濃度ビタミンC療法などによる新しいがん治療など広く普及し、すでに多くの成果を生み出しています。

私は、アメリカのように、日本も予防医学によって国民全員が病気に悩まされることなく、もっと健康的で充実した生活を送れるようになることを願っています。

そのために、今後も予防医学の普及に全力で取り組んでいきたい。

具体的には、4つの対策を考えています。

 

元気長寿社会を実現するための対策

1.検診健康チェックによって、早めに病気の原因を発見していく

2.検査の結果、異常があれば早期の診断と治療、その後生活改善指導

3.「自己責任による生活習慣病の積極的予防」の指導やモチベーションづくり

4.医学的根拠に基づいた統合医療、予防医療を実際に行い、そして広く啓蒙していく

 

もっと積極的に検査を実施していくことで、早期の病気治療と予防意識を高めていくことができれば、超高齢化社会を迎える日本にとって非常に有益なことだと思います。

「日本人誰もが、寿命をまっとうするまで心身ともに健康に生きること」

これは、私にとって大きな目標であり、また、心から願っていることです。その大きな目標を達成するために、今日も目の前の患者さんと真剣に向き合っています。

 

最後に、ここまでブログを読んでくださった読者の皆さん、どうもありがとうございました。

このブログをきっかけに、少しでもご自身、ご家族の健康のこと、そして予防に対する意識を持っていただけたら幸いです。

これからは医療も“自己責任”能力が必要になると思っています。自分の健康は自分で守る、多くの情報から正しい情報を選択できるように、信頼できるパートナー、つまりホームドクターとの親密な関係が求められてきます。

情報開示されたいろんな治療法の中から、主治医の意見も聞きながら、最終的には治療方法を自分で決める。

それだけの情報を開示できるような、開かれた医療大国日本とすべく、 “医学的根拠を持つ原因療法、栄養療法とそれによる正しい健康増進、再発予防、体質改善の治療の啓蒙活動”

が私の生涯の仕事であると考えています。

 

長い間、読んでいただきありがとうございました。また何か新しい情報を発信できるように、考えてみたいと思います。

またお会いできるのを楽しみにしております。

高島正広

 

 

 

 

 

 

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